月見草02
君からの手紙を読んだときは
まだ君の事は全く知らなかった。
容姿も、何をしている人かもね。
その頃は「掲示板」というものが、
色々なジャンルでインターネットの世界で
複雑に人と人を繋ぎ始めていた。
まだ個人情報なども今ほど気にする事もなかった時代。
その頃僕は自分のオリジナルソングの宣伝やライブ活動の営業目的で、様々な掲示板に書き込んでいた。
ある日君からの返信が届いていた。
「今度仕事でそちらの方に行くので、ライブ行けたら行きたいです。」
その時はまだ特別な事は何にもなく
一人お客さんが増えて、ライブノルマ
一枚分の負担が減ったと思ったくらいだった。
急いで返事をした。
「下記のメールアドレスにお名前と枚数を書いてお返事下さい。」
音楽以外楽しみも感じない毎日を過ごしていた僕。
都会の光り輝く街とは対照的に、
その光に埋もれたまま、自分が輝ける場所が訪れる事をただ信じて、変化のない毎日を過ごしていた。
ただ生きていく為だけの、面白くないバイトを毎日こなして、明日の不安をかき消すように
バイトで知り合った友達と、毎晩出掛けてはアルコールで現実逃避をする。
新しい曲を書きたいけど、そんな毎日に何のエネルギーもなく、悪循環にスパイラルな上り階段を登っていた。光が届く場所までかなり遠回りだとは、わかっていた気がする。
実は、僕は最近まで大きなステージで仕事をしていた。
スポットライト浴びてね。毎回1500人満席のお客さん。
自分の音楽がやりたくて、僕はそこから逃げた。根拠のない自信で僕は自分で自分を舞台から引きずり下ろした。
光が届く場所にいたのに、また街の中に身を隠した。
不安と寂しさは、夜中になるとこの身体を蝕む。これは今でも変わらないままで、電気を消して寝る事は出来なくなった。
行く先を照らす光が消えていた。
そんな時、メールが届いていた。
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