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月見草06

新幹線指定席
天気は快晴で、窓の外の風景もいつもより輝いて見えた。
ただ晴れていたからではないと思う。
特別な日だったからだ。

3時間ほどで東京に到着。
久しぶりの東京駅に少し降りてみたくなって
2時間ほど時間をつぶした。

昔はこの街に初めて来た時は、行くあてもなく辿り着いた感じだった。
帰る場所も行く場所もなくて、ふらついていた。
ネオンの色に自分を染め上げた。
信じていたのは自分の音楽と夢だけ。

あれから時は過ぎて、この街でも色々な出来事があった。
そんなことを考えながら、夜行バス乗り場の近くにあるカフェで
懐かしさの風に吹かれていた。

早く郡山に着きたい気持ちと、すぐに着かないで、この前兆をもっと楽しみたい自分もいた
今日、明日はすこしいつもより長い1日になってほしかったんだ。

理由は幸せな時間はすぐに終わることがわかっているから。
小さい頃楽しみにしていた夏休み。でも始まると結構すぐにおわっちゃうんだよね。

旅も始まる時よりも始まるまでが一番楽しい。
コーヒーを飲み終えて、また改札へ向かった。

郡山までの新幹線のチケットを購入した。

もうすぐだね。 君のいる街に着く。

短い短い物語が始まろうとしていた。
駅の待合室に設置のテレビから、ドラマのオープニングのテーマソングが流れ始めていた。

2時間もしないうちに郡山に着いた。 
改札を出た。 本当に来たんだと、現実を実感する瞬間。
目の前に広がる生まれて初めて見る風景、それが現実。

毎日同じ道を通う駅に、こんな感動はなくて
たまには知らない駅で降りる事も、ココロは欲しているのかもしれない。
一人旅ならではの、味 かもしれない。

朝からほとんど何も食べてなかった。興奮する気持ちで中枢神経も麻痺をしていたが
ようやく、空腹感が訪れた。
目の前に、昭和の香りがする定食屋さんがある。
地元のおばさんが定食を運んでいる。
東北の家庭にお邪魔して、ご馳走をいただけるそんな感じがしたので
この店に入る事にした。

僕の頭の中では勝手なドラマを作り上げる事がある。
定食を運んできたおばさんが僕に聞く
「おにいさん、旅行? どこから来たの?」
そこで僕は答える
「神戸からです。 でも旅行ではないんです。 会いたい人に会いに来ました。
 本当は明日なんだけど、気持ちがおさまらなくて今日来ちゃったんです。」

そんな勝手なドラマを頭の中で脚本を作っていたが、
現実はそううまくいかない。

おまたせー と一言。 そして ごゆっくりー と二言目。
まぁ そんなもんだろうと思いながら、定食をいただいた。
普通なのかもしれないが、特別な味がしたような気がした。

駅前の空を見上げた。

平日の午後。  東北 郡山の空。
もう少しだけ冬の香りがする。
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